「桜の森の満開の下」

関東地方では、今週末がお花見の最後でしょうか。

昨日に引き続き、好奇心が増して、坂口安吾著「桜の森の満開の下」
を読んでみました。

梶井基次郎著「桜の樹の下には」tと似たタイトルと紛らわしいですね。
やはりここでも、桜の尋常ではない美しさが作者に
インスピレーションを与えることになります。

解明しがたい美しさは恐れさえ抱かせるのですね。
自分を惑わせる桜と女性のイメージを巧みにかぶせて
幻想的な物語を展開していきます。

最後は、降り積もった桜の花びらをかきわけて女を捜すも
そこには冷たい虚空がはりつめていただけという悲しげなもの。

とても映像的なイメージが広がる作品で
蜷川幸雄演出、平幹二郎、故太地喜和子出演の舞台が似合うような気がしました。

とはいえ、情念の世界というよりは、一人の孤独感がひしひしと迫ってくるのは
無頼派・坂口安吾ならではの世界ですね。